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農林水産省

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EUの農業政策

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平成26年11月19日更新
  1. EUの共通農業政策(Common Agricultural Policy:CAP)の概要
  2. 価格・所得対策
  3. 農村振興政策
  4. CAPのあゆみ

1. EUの共通農業政策(Common Agricultural Policy:CAP)の概要

  • EUの共通農業政策(CAP)とは、EUにおいて加盟国28カ国で共通して講じられている農業政策。
  • CAPは、1950年代当時、欧州各国で講じられていた農業政策が保護主義的性格が強かったことから、共通市場の設立、生産の増強を図るためには域内での調整が必要であるとの考え方から1962年に導入された。
  • その後、財政負担の増大、ウルグアイ・ラウンド農業交渉、WTO農業交渉への対応等の観点から、1992年、1999年、2003年、2008年に政策の見直しが行われ、さらに、2013年には農業の公共財としての役割強化の観点等から見直しが行われた。
  • CAPは、(ア)農業者の所得を保障するための「価格・所得政策」、(イ)農業部門の構造改革、農業環境施策等を実施する「農村振興政策」の二本の柱から成り立っている。

2. 価格・所得政策

(1) 価格支持(最低価格の保障)

作物別に支持価格を定め、市場価格がそれを下回った際に、EU加盟国の機関が買い支えを実施。

対象となる作物:小麦、大麦、トウモロコシ、コメ等の穀物、牛肉、バター、脱脂粉乳

(2) 直接支払い(農業者の収入の保障)

  • 1992年に、価格支持制度における支持価格の引き下げによる農業者の所得減少を補填するために、農業者に対する直接支払いを導入。
  • 直接支払いは、当初、品目ごとに決められた支払い単価をもとに、作付面積等に応じて支払われていたが(カップル支払い)、2003年改革において、支払いを生産と切り離し(デカップリング)、過去の支払い実績に基づいて支払い額を決めるという、品目によらない単一直接支払いを導入(実施は2005年から)。  
  • 2013年改革において直接支払い制度は刷新され、グリーニング支払い、各種目的別支払い等が定められた(2015年から本格実施)。
  • 直接支払いを受給するためには、農業者は、環境・土壌保全等に関する共通遵守事項(クロスコンプライアンス)を満たす必要がある。 

3. 農村振興政策

EUは、農村振興政策として、条件不利地域対策、農業環境政策のほか、青年農業者の就農支援等を実施。 

4. CAPのあゆみ

CAPは、1992年以来、様々な改革が行われている。

(1) 1992年改革

生産過剰、輸出補助金等の財政負担の増大、ウルグアイ・ラウンド農業交渉(輸出補助金の削減、AMS(助成合計量)の削減)への対応

(ア)支持価格の引下げ

例)穀物は3年間で29%引き下げ

(イ)支持価格引き下げ分を補償する措置として、直接支払いを導入

(ウ)直接支払いの受給要件として休耕を義務づけ 

(2) 1999年改革(アジェンダ2000)

中東欧諸国のEU加盟に備え、EU農業の国際競争力(特に価格競争力)の強化

(ア)価格支持から直接支払いへのシフトの強化

例)穀物の支持価格を2年間で15%引き下げ、直接支払い単価を引き上げ(支持価格引き下げ幅の50%)

(イ)直接支払いの受給要件としてクロスコンプライアンスを導入(加盟国の判断により実施)

(ウ)農村振興政策の強化(CAPの第2の柱として確立)

(エ)直接支払予算を削減し、農村振興政策予算に財源を移転するモジュレーションの導入(加盟国の判断により実施) 

(3) 2003年改革

WTO農業交渉(「青の政策」に位置付けられている生産にリンクした直接支払を「緑の政策」にシフトする必要等)への対応

(ア)単一直接支払いの導入(2005年~)

支払いを生産と切り離し、2000年から2002年までの受給実績を基に支払い(デカップリング)

(イ)価格支持の更なる削減と直接支払いの拡充

(ウ)クロスコンプライアンスの遵守事項を拡充し義務づけ

(エ)モジュレーションを義務づけ(2005年~) 

(4) 2008年改革(ヘルスチェック)

 (ア)直接支払いは原則として2010年から生産リンク支払いを廃止(デカップリングの徹底)

例)耕種部門で認められていた生産にリンクした直接支払い(給付額の25%まで)を2010年1月から廃止

(イ)義務的休耕の廃止

(ウ)価格支持(市場介入)の縮小

例)普通小麦以外の穀物(大麦、デュラム小麦、コメ等)について、2009年から介入制度は存続させつつ介入限度数量をゼロとする

(エ)クロスコンプライアンス適用範囲の見直し

(オ)モジュレーションの強化

(カ)モジュレーションの強化による資金を、気候変動、再生可能燃料等の新たな政策課題への対応に重点的に配分

(5) 2013年改革

財政削減、農業の公共財としての役割強化、直接支払の格差是正

(ア)直接支払い制度の全面的見直し(環境要件の強化等)

直接支払いを基礎支払いと、グリーニング支払い等の各種目的別支払いに再編。各国の直接支払い予算のうち3割はグリーニング支払いに配分されることとされ、農家はグリーニング支払いを受給するため、従来のクロスコンプライアンスに加え、それを上回る環境要件(作付品目の多様化、環境重点用地の設定、永年草地維持)の遵守が義務づけられた。

(イ)加盟国間の直接支払いの単価の不均衡是正

(ウ)農村振興政策における環境対策の強化

(エ)従来のモジュレーションに代わり、価格・所得政策(第1の柱)と農村振興政策(第2の柱)の間の予算の弾力化(加盟国は双方向に予算の最大15%まで移転可能)

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