19年2月号 文字情報
aff(あふ)agriculture forestry fisheries:February 2019
平成31年2月1日発行(毎月1日発行)
[表紙]
今月の「手」
こころみ学園の田村先生(左)と園生のジュンさん(右)
ココ・ファーム・ワイナリーで、しいたけの原木を一緒に運搬。
撮影/かくたみほ
CONTENTS
- 連載 私のおもいで弁当[大阪府]vol.10 … 2ページ
- 特集1 農福連携 … 4ページ
- 特集2 スマイルケア食 … 14ページ
- 全国の日本一を訪ねて vol.10 … 18ページ
- MAFF TOPICS … 20ページ
News
「ディスカバー農山漁村(むら)の宝」グランプリ決定
木のある豊かな暮らし
日本の農林水産物・食品を世界へ
花を通じて四季を感じる
- 読者の声 … 23ページ
今月のクイズ
飲み物などを飲み込みやすくするために加えるものは何でしょうか。(答えは23ページ)
広報誌『aff(あふ)』について
農林水産業や農山漁村は、食料の安定供給はもちろんのこと、国土や自然環境の保全、良好な景観の形成などの多面的機能の発揮を通じ、国民の皆さまの毎日の生活において重要な役割を担っております。また、農林水産行政は、生産などの現場に密着したものであると同時に、毎日の生活に深く関わっています。農林水産省では 「aff」を通じ、農林水産業における先駆的な取り組みや農山漁村の魅力、食卓や消費の現状などを紹介しております。
Webサイトのご案内
「aff」は農林水産省のWebサイトでもご覧になれます。
https://www.maff.go.jp/j/pr/aff/
本誌に掲載した論文などで、意見にわたる部分は、それぞれ筆者の個人的見解であることをお断りします。
私のおもいで弁当
子どもたちに伝えたい郷土料理や懐かしいふるさとの食材を使ったお弁当を、著名人が、お弁当へのあふれる想いと共に紹介します。全国のふるさとの美味を、あなたもお弁当に入れてみませんか?
【vol.10】大阪府 たこ焼き
大阪発祥の郷土料理。小麦粉をだし汁で溶き、ぶつ切りのたこ、長ネギなどの具材を球形に焼き上げる。ソースをかけるようになったのは戦後とされ、それ以前は、だしの効いたしょうゆ味で食べられていた。
[写真1]
たこ焼き
[写真2]
木下ほうか
Houka Kinoshita
1964年生まれ。大阪府大東市出身。大学卒業後、吉本興業の座員となるも、その後俳優に転身。2018年11月に著書『僕が骨髄提供をした理由。言うほどたいしたことなかったで~!』(辰巳出版)を発表。
[写真3]
木下ほうかさんのママ弁当
この世で一番好きなのは母親が作ってくれた料理
「売れたい」、「儲けたい」、「モテたい」……あらゆる欲望とともに、25歳の僕は大阪から上京しました。自分の顔を人前にさらしたり、プライベートを披露したり、芸能人になるというのは大変なものです。僕も覚悟を決め、不退転の決意でいました。
それにもかかわらず、ほどなくして大阪に帰るようになってしまった僕。それはひとえに母の手料理が恋しかったからです。本当に料理上手な母で「こんなものが食べたい」と言えば、どんな料理でも作ってくれました。30代で結婚を考えた時には、彼女に母の味を継いでほしいと真剣に思ったものです。結局、結婚はしませんでしたけれど、男というのはいつか、母親の味と決別しなくてはいけないのでしょうか。母も高齢になったので、自然にゆっくりと、母の味から卒業しているように思います。
各家庭や地域で異なるたこ焼きの味
僕は母が作る豆ご飯が大好きで、食べたい一心で、よくサヤから豆を取り出す手伝いをしたものです。中学時代、弁当に豆ご飯が入っていたら、おかずは夜の残り物だらけだったとしても、もちろんOK。関東の人は驚くかもしれませんが、たこ焼きがおかずに入っていることもありました。
関西人にとって、たこ焼きは家で作るもの。だから各家庭の味があります。我が家のたこ焼きは、お好み焼きのようにキャベツのみじん切りがたくさん入っていました。家の近所にあった総菜店のたこ焼きもそうだったので、地域の味だったのかもしれないですね。それを当時は、アルマイトっていうアルミを加工した素材の弁当箱に詰めていました。そうそう、関西人はなぜかお茶づけが大好きなんですよ。僕も最後は弁当箱にお茶を入れて、ご飯をかきこんだっけ。思い出したら、アルマイトの弁当箱で、お茶づけを食べたくなっちゃったな(笑)。
[レシピ]キャベツたっぷり!たこ焼き
【材料(40個・およそ4人分)】
A
薄力粉…200グラム
だし汁(鰹節)…600cc
卵…2個
しょうゆ…大さじ1
酒…大さじ1
みりん…大さじ1
B
たこ(1口大)…300グラム
キャベツ(みじん切り)…4分の1玉
天かす…大さじ5
紅しょうが(みじん切り)…少々
C
ソース、マヨネーズ、鰹節、青のり…適量
油…少々
【作り方】
- ボウルにAを入れて泡立て器で混ぜる。ザルで1回こし、生地を約30分寝かせる
- たこ焼きプレートを熱して油を薄くひき、生地を穴の中に流し入れ、Bを入れる
- 具材にある程度火が通ったら、残りの生地をプレートからあふれるくらい流し入れる
- 周りが固まり始めたらプレートの周りから生地を集め、中に押し込めるようにしてひっくり返す
- ひっくり返して両面をカリッと焼く。お好みでCをかければ完成
監修/飯倉孝枝、取材・文/柳澤美帆、撮影/三村健二
特集1 農福連携 支え合い、ともに進む
[写真1、写真2、写真3、写真4、写真5]
農業と福祉。かけ離れているように思える二つの分野で、win - winの関係が構築される事例が増えています。
農業と福祉の問題を軽減するシアワセな連携
農業は、就農人口の減少や耕作放棄地の増加などの問題を抱えています。その一方で、障害者が土に触れて作物が育つ過程を体感すると、さまざまな良い効果を得られることが知られていました。そこで農業と福祉が連携して、障害者の働く場や居場所を作ろうという農福連携の動きが近年活発になっています。農業に取り組む福祉施設は増加しており、2012年度には全体の3分の1の施設が農業を行っています。
連携の方法はさまざまですが、その多くは農家が障害者福祉施設に農作業を委託するもの。これは施設の職員が農家に代わって障害者に適切な作業を指示し、労働報酬を得るという形です。ほかにも、農家との連携を機に自ら本格的に農業に参入した福祉施設もあれば、逆に新規就農した農家が、地縁がないため人手を確保できずに福祉施設と連携することも。複数の施設と作業契約を結び、非常に優れた農産品を作ることに成功している例もあります。
両者のニーズを把握するコーディネーターの重要性
しかしこうした連携が、出会いに恵まれて自然に行われることはまれです。農業サイドには、障害者に対する理解が十分ではない場合が多く、福祉サイドには人手を欲しがっている農家の情報がなかなか入ってきません。
そこで必要になるのが、両者を取り持つ「マッチング支援」です。鍵となるのは、農業と福祉の両方に通じたコーディネーターの存在。両者のニーズを的確に読み取って懸念事項を解決し、障害者の特性を踏まえて農作業を切り分け、適切なマッチングを行う役割を担います。
農業と福祉の良好な関係が築かれれば、地域の活性化にも大いにつながります。両者の良好な関係作りのため、農業の作業補助や就労作業監督の役割を担う農業サポーターなどを置いている自治体もあり、こうした支援が徐々に広がりを見せています。
[図1]
障害者福祉施設における農業活動の実施割合(累計)
出典 :NPO法人日本セルプセンター「農と福祉の連携についての調査研究報告」(2014)から作成
お互いを知るためにまずは一歩を踏み出そう
農業と障害福祉の親和性の高さは以前から認識されており、農福連携の取り組みは以前からありました。しかし、農家が障害者に正当な対価を払って作業を手伝ってもらっても、周囲から「安い賃金で作業させている」といった陰口をささやかれるのではないかとの懸念からなかなか広がりませんでした。ただ、こうしたことは公的な存在が間に入ることで一気に解消されます。自治体などが支援体制を整備し、さらには農業体験や交流イベントを行うなどして農業と福祉事業所が出会うきっかけを作ることができれば、ともにメリットを享受できる農福連携は目の前にあります。まずは「お互いを知る」。それが農福連携の最初の一歩なのだと思います。
吉田行郷(よしだ ゆきさと)さん
農林水産政策研究所 企画広報室長兼首席政策研究調整官
農学博士。長年、農福連携の研究に取り組み、全国の現場に足を運んでいる
[写真6]
吉田行郷さんの写真
農業分野と障害福祉分野との連携
出典:厚生労働省、農林水産省「福祉分野に農作業を-支援制度などのご案内-」から作成
[イラスト1]
農家・農業法人など
[イラスト2]
障害者福祉施設
農家・農業法人などから障害者福祉施設へ農作業を委託
障害者福祉施設から農家・農業法人などへ労働力を提供
障害者福祉施設のメリット
- 農業は障害の特性に応じた作業が可能
- 自然に触れることで情緒が安定し、リハビリ効果につながる
- 一般就労に向け、体力や精神面が鍛えられる
農家・農業法人などのメリット
- 高齢化で農業従事者が減少する中で、補助労働力として障害者に期待
- 障害者の雇用促進により、農業を通じて社会的要請に貢献
就労継続支援事業所について
企業への就職が難しい障害者に就労機会を提供し、必要な技能訓練などを行う事業所。雇用契約を結んで最低賃金以上を支払う「A型」と、雇用契約を結ばないで受け入れる「B型」の2種類があります。
各地の取り組み事例に見る農福連携のカタチ
各地で起こっている農福連携の取り組み。ここではその先進事例を取り上げ、どのように障害者の力を生かしているのか、それぞれのカタチをご紹介します。
【ケース1】ココ・ファーム・ワイナリー
障害者が日々手入れするぶどう畑から世界に認められるワインが生まれる
[写真1]
毎年11月に開催される収穫祭。2018年の収穫祭には2日間で1万人以上が集まった
[写真2]
ぶどうの房に傘をかける作業。20万枚を1カ月でかけ終える
知的障害を持つ生徒のためにぶどうを植えたのが始まり
栃木県の足利市駅から車で20分ほど、山間に畑が点在するエリアにココ・ファーム・ワイナリーはあります。急斜面に広がるぶどう畑の向かいにはレストランとショップがあり、料理やワインを求めて、平日でも客足が途絶えることはありません。
農福連携の先駆けといわれるココ・ファーム・ワイナリーは、知的障害者支援施設「こころみ学園」が、園生の働く場として1980年に設立しました。ぶどう栽培やワイン造りの作業の一部などを学園に委託しています。
「今から60年前、中学の特別支援学級の担任だった父がこの土地を購入し、障害を持つ生徒たちがずっと働ける場所を作るために、開墾してぶどうを植えたのが始まりです」と話すのは、学園施設長の越知眞智子(おちまちこ)さん。ワイナリーと同じ敷地内にある学園には、18歳から96歳までの知的障害を持つ100名弱の園生が暮らし、ぶどう畑の手入れやしいたけの原木栽培など、個々の特徴や能力にあった作業を担っています。
園生たちの地道な作業がおいしいワイン造りを支える
現在は年間20万本、約30種類のワインを製造。2008年の北海道洞爺湖サミットや2016年の主要7カ国(G7)外相会合などで各国首脳に振る舞われたほか、日本の航空会社の国際線ファーストクラスに採用されるなど、その品質は国内外で高く評価されています。
「園生たちはひとつのことを淡々とこなすのが得意なので、真夏の草刈りなど根気の必要な作業も手抜きをすることがありません。だから、うちの畑は除草剤を使ったことがないんですよ」と越知さん。大量のラベル貼りなども、知的障害を持つ人の特性である几帳面さが発揮され、ひとつひとつ丁寧に仕上げられます。
「障害を持つ人たちは、自分がしている作業が人の役に立っているということに大きな喜びを感じています。彼らが力を発揮できる環境を整えられれば、農福連携はいいカタチで成り立つのではないでしょうか」。長年、園生と向き合ってきた越知さんはそう話してくれました。
[写真3]
「福祉だとは思っていない。皆で生きていくために当たり前のことをしているだけ」と話す越知さん
[写真4]
朝から晩まで缶を叩いてぶどう畑に来るカラスを追い払う。カラス番も大事な仕事
[写真5]
ぶどうの収穫はスタッフと園生が総出で行い、急斜面のぶどう畑を1日に何度も上り下りする
[写真6]
ワインボトルを運んだり、収穫したぶどうを潰したりなど、園生は醸造所の作業にも携わっている
[写真7]
右から、人気の「甲州F.O.S.」、「こころみノートン」、「北ののぼ ロゼ」
[写真8]
レストランでは25種類のワインが味わえる
[写真9]
こころみ学園の看板犬、ピレネー犬のさくら。世話をするのは園生のタカセさんの担当
【ノウフクDATA】有限会社ココ・ファーム・ワイナリー
(第5回「ディスカバー農山漁村の宝」選定地区)
栃木県足利市田島町611
電話:0284-42-1194
事業:ワイン製造販売。ぶどう栽培やワイン造りの作業の一部を、障害者支援施設「こころみ学園」に委託
[QRコード1]
https://cocowine.com/〔外部リンク〕
※「ディスカバー農山漁村(むら)の宝」選定地区とは、政府の有識者懇談会が選定している農山漁村活性化の優良事例(20ページ参照)
撮影/かくたみほ
【ケース2】京丸園(きょうまるえん)
ユニバーサル農業として農業と福祉の融合を目指す
[写真10]
京丸園で働く皆さんの写真
働きたいという想いに応え農作業体験から始めて
「受け入れたきっかけは、求人をご覧になった障害を持つ子とお母さんが来園され、『給料はいらないから働かせてほしい』と懇願されたことでした。障害者雇用の現実を知り、何か役に立てるのではと思い、まずは農作業体験として受け入れました」と語る園主の鈴木厚志さん。
まずは障害者就業・生活支援センターに登録してもらい、個々の作業能力を共有することから開始。受け入れてみると従業員が自然と支援する中で、職場が明るくなったと言います。「毎年雇用を増やし、現在は25名が就労しています」。
能力と給料のバランスが鍵。お互いに必要な存在として
「私たちが掲げるユニバーサル農業では、農業と福祉の融合を目指しています。農業が福祉を支援するのではなく、お互いが協力し合う中で、売上や目標などの成果を見える化し、障害者の雇用が農業を強くすることを数字で示したいと思っています。そして個々の能力に見合う給料を払えるようにしたいのです」と鈴木さん。それには農業経営の在り方をしっかりと見つめ、生産工程における役割分担を明確にすることが大切だと言います。「例えば『トレイを綺麗にしておいて』といった抽象的な指示ではうまくいきません。作業工程を分解し、具体的に指示することで精度が均一になり、生産性も上がりました」。
[写真11]
野菜に付く虫を吸い込む「虫トレーラー」。障害がある人のゆっくり進むペースが虫を捕まえるのに適している
[写真12]
園主の鈴木さん
[写真13]
アイガモ農法による「コシヒカリ」のほか、「姫ねぎ」、「姫みつば」、「ミニちんげん」などを生産
[写真14]
外食産業などで需要が高い一方で手間のかかる小さな野菜。その収穫作業を障害者が担っている
【ノウフクDATA】京丸園株式会社
静岡県浜松市南区鶴見町380-1
電話:053-425-4786
事業:芽ねぎ、ちんげんさい、みつばなどを栽培する農業法人
[QRコード2]
https://www.kyomaru.net/〔外部リンク〕
【ケース3】九神(きゅうじん)ファームめむろ
経験が人を変えてゆく。好きなことを仕事にしたい
[写真15]
九神ファームめむろで働く皆さんの写真
芽室町を福祉の町にしたい
食品加工で安定雇用を確保
宮西元町長が「誰もが当たり前に安心して働いていける町づくり」構想を掲げた芽室町。その想いに応え、障害者雇用実績のある総菜店チェーン「クック・チャム」が出資して、町内初の就労継続支援A型事業所として設立されました。「主要事業は農作物の生産販売と食品加工の二本立てです。雇用契約を結んでいる障害者たちには、社会で働いていける力を養えるように、先輩の利用者が後輩の利用者の面倒を見ながら、自分でできることは自分でするよう指導しています」と語るのは、サービス管理責任者の貫田尚洋さん。
人との関わり方に変化が
将来は好きなことを仕事に
貫田さんによると、施設を卒業し一般就労に至った人は7名。3名が就労先で利用者からスタッフにステップアップし、他の4名はスーパーの総菜部で弁当の盛り付け、食品工場での作業、一般事務などさまざま。一般就労に至った一人に話を伺うと、「入社前は人との関わりが苦手だったのですが、入社してから経験を積んだことで、人と関わりやすくなりました。自分のことを優先する前に、人の役に立つことをしてから自分のことを考えるのが大事だと思います。今後はさらにステップアップを目指して、家具の製造など自分が好きなことを仕事にしたい」と答えてくれました。
[写真16]
嵐山工場内でじゃがいもの皮むきなどの加工を行う。1日に600キログラムのじゃがいもを加工することも
[写真17]
大根の収穫を喜ぶ従業員の皆さん。他にもじゃがいも、かぼちゃ、大豆などを育てている
[写真18]
九神ファームの利用者で運営している食堂「ばぁばのお昼ごはん」でも障害者がいきいきと働いている
[写真19]
「ばぁばのお昼ごはん」で働く利用者の本間さん。人懐っこい笑顔を見せるも、以前は人との関わりが苦手だったとか
【ノウフクDATA】株式会社九神ファームめむろ
(第3回「ディスカバー農山漁村の宝」選定地区)
北海道河西郡芽室町中美生2線47-1
電話:0155-65-2280
事業:農作物の生産・販売、食品加工、お弁当の製造・販売、観光業
[QRコード3]
http://kyujinfarm-memuro.co.jp/〔外部リンク〕
障害者と農家をつなぐ(JA松本ハイランド)
農家が慢性的に抱えている人手不足の解消と、雇用契約に基づく就労が難しい方が通所する就労継続支援B型事業所所属の方たちの所得向上を目指し、2017年より無料職業紹介事業に基づくマッチングを行っているJA松本ハイランド。
「B型就労の方の月平均工賃は15,295円で、時給換算では199円しかありません。この方々の所得向上と、スポット的に人手不足となる農家の需要を合致させるために始めました」と語る同JAの鎌伸吾さん。「青年部の事務局をやっていて、もともと農家さんとコミュニケーションが取れていたことと、長野県セルプセンター協議会の協力もあり、スムーズに立ち上げることができました」。
[写真20]
事業所向けトマト収穫作業の事前説明会
今年度上半期は210件のマッチングができ、トマトの収穫や長いも棚の片付けなど、着実に作業需要が広がる一方、福祉事務所にも農家の側にもまだためらいがあると言います。「できるものをできる範囲でやるのがいいと思います。高齢で廃業を考えている方が、障害者の方に手伝ってもらうことにより、1年でも2年でも長く続けられる。そうして次代につなげられるといいなと思います。押し付けるものではありませんから」。
[写真21]
ぶどうの枝の片付け作業の手順を農家が説明
取材・文/柳澤美帆
【レストラン・カフェ編】まんぷく農福
農福連携に取り組む福祉施設などが運営するレストランやカフェをご紹介。ぜひ足を運んで味わってみてください。
【東京都】畑deきっちん
丁寧に育てた無農薬・減農薬野菜でお腹も心も大満足な創作料理を提供
「NPO法人多摩草むらの会」が運営する事業所で作る野菜や、提携農園の減農薬野菜などをたっぷり使った料理が好評。スタッフはハローワークを通じて事業所と雇用契約を結び、健常者・障害者の隔てなく、下準備、加熱調理、仕上げなど、担当を持って働いています。食を通じて達成感と充実感を味わうことが目標で、店舗業務を行う中でスキルアップを図ることができます。
[写真1]
ココリア多摩センターの飲食店街に2013年にオープン。夢畑の野菜なども販売
[写真2]
スキルアップのために厨房とホールを掛け持つことも
[写真3]
多摩草むらの会が運営する農園「夢畑」。農作物を育て、収穫することが格別の喜び
[写真4]
花籠御膳/1,780円、日替りAランチ(肉)/880円、日替りBランチ(魚)/880円
※価格はすべて税込みです。
【茨城県】トラットリア・アグレステ
特別な時間を過ごしてもらうために最高の接客を目指して
本格イタリアンとワインを味わえるレストラン。すべての食材は地産地消で、野菜や果物はJAや直営の「白銀ファーム」のものを厳選。豚肉は石岡市の養豚場のもの、牛肉は茨城県産の銘柄黒毛和牛・常陸牛(ひたちぎゅう)を使用。障害を持つ人もキッチンやホール業務などの仕事に携わり、オリジナル作業マニュアルで仕事の達成度をチェックしながら、スキルアップを図っています。
[写真5]
お客さんとのふれあいによってスタッフが成長
[写真6]
白銀会の直営農場で収穫した野菜はレストランでも使用
[写真7]
お店の外観写真
[写真8]
おすすめメニュー:蓮根と大洗産しらすの和風ピッツァ/1,512円、季節野菜のペペロンチーノ/1,404円
※価格はすべて税込みです。
【福島県】直売・カフェ こころや
新鮮な農作物が大人気
直売所・カフェでまごころのおもてなし
「こころんファーム」の自家製堆肥で作る野菜や、提携農家の有機栽培の農作物・加工品など、安心でおいしい食品が並ぶ直売所のほか、カフェでランチやスイーツが楽しめます。「こころん」の利用者が餌作りから収穫・選別までの一連の作業を丁寧に行う鶏の卵「ここたま」は一番人気。2008年には福島県の「ふるさと恵みの店」に認定されました。
[写真9、写真10]
平飼いで育てる鶏の卵は、優しい味わいが人気
[写真11]
こころんファームで栽培する無農薬野菜は、カフェに併設された直売所でも購入できる
[写真12]
畑の玄関先でありたいという想いから移動販売もスタート
[写真13]
おすすめメニュー:きまぐれランチ/864円、お野菜たっぷりドライカレー/864円、季節のパルフェ/378円
※価格はすべて税込みです。
【京都府】さんさん山城コミュニティカフェ
丹精込めて作った地元の特産品をおいしいメニューに調理して提供
聴覚障害者の就労を支援する「さんさん山城」の自家農園で育てた野菜を使ったランチを提供するカフェ。2017年にオープンして以来、京都えびいもや京都田辺なすなど、地域の特産品をワンコインで味わえると評判です。仕込みから接客まで、作業は「さんさん山城」を利用する障害者が中心。セルフサービス、ワンコインという値段設定など、働きやすい職場環境を整えています。
[写真14]
遊休農地を利用して、京都えびいもを生産
[写真15]
地元のJAなどに出荷するほか、規格外のものはコロッケに加工
[写真16]
キッチンでのカレー作り。米も地元の京やましろ産にこだわる
[写真17]
おすすめメニュー:京都えびいもカレー/500円、京都田辺なす丼/500円、えびいもコロッケ/100円
※価格はすべて税込みです。
【通販・マルシェ編】まんぷく農福
全国の農福連携食品を通販やマルシェで購入できます。そのおいしさにリピートする人も少なくありません。
ノウフクオンラインショップ
農福連携と消費者を結ぶ窓口として、2018年10月にオープン。日本農福連携協会の正会員が出品した商品が手に入ります。
電話:0744-34-7029(日本総合園芸)
[写真1]
ノウフクオンラインショップのサイトの写真
サイトはこちら
[QRコード1]
https://noufuku.shop/〔外部リンク〕
杣(そま)の森ギフト/5,000円(税込)
〔生産者〕社会福祉法人青葉仁会(奈良県奈良市)
カフェ、食品製造、農業、石鹸やクラフト作りなどの生産活動を通じて、障害者の成長と発達を支援。同時に、障害者の地域社会での役割獲得や自立への助け、生きる喜びが得られる活動を目指している。
[写真2]
調理の様子
[写真3]
奈良県産の有精卵や三重県産の大内山バターなど、素材にこだわって作ったお菓子の詰め合わせセット
自然栽培米コシヒカリ(白米)3キログラム/2,700円(税込)
〔生産者〕社会福祉法人ゆずりは会(群馬県前橋市)
米作りなどの農作業を活動の柱として、障害者を支援している。単に農業の担い手としてだけでなく、地域の方々へ向けた米の苗の販売や乾燥調製の受託などを通じて、地域農業に携わっていくことを目指している。
[写真4]
おむすびの写真
[写真5]
米本来の味を引き出すため、豊かな自然のもとで栽培
森林ノアイス、コッチェのショコラアイス各3個セット/2,980円(税込)
〔生産者〕森林ノ牧場株式会社(栃木県那須町)
活用されていない森林にジャージー牛を放牧し、搾った生乳から牛乳やソフトクリームなどの乳製品に加工。開業当初から障害者の雇用を行い、牧場の仕事を通じて人と人のつながりを作り、働くスタッフの価値を引き出している。
[写真6、写真7]
「森林ノ牧場」の濃厚なジャージー牛乳のミルクアイスと、那須の工房コッチェと一緒に作ったショコラアイス
あわら産 梨とぶどうのジュースセット/3,002円(税込)
〔生産者〕NPO法人ピアファーム(福井県あわら市)
障害者の職域拡大を目指し、果樹や野菜を栽培するほか、直売所やスーパーマーケットを運営。店舗は地域生活を支えるほか、地元農家の出荷先として活用され、農業と地域の活性化に取り組んでいる。
[写真8]
収穫の様子
[写真9]
種も皮もまるごと搾り、何度もろ過を行って上澄みだけを用いるなど、手間暇かけて作ったジュース
なのはな村 詰め合わせセット/2,160円(税込)
〔生産者〕社会福祉法人なのはな村(宮崎県都城市)
有機農業を志し、野菜や米、地鶏を育てている。レストランや直売所も経営し、障害者一人ひとりが個性を生かした仕事に就けるよう支援を行う。地域社会に根ざし、共に育つ事業所を目指している。
[写真10]
畑作業の様子
[写真11]
地粉うどんと地粉そうめん、ごぼう茶、梅干し、ブルーベリージャムの5種類の詰め合わせ
花の木農場 ハム詰め合わせ/3,240円(税込)
〔生産者〕社会福祉法人白鳩会(鹿児島県南大隅町)
入所施設「花の木ファーム」の利用者とスタッフが、近隣農家から借り入れた耕作放棄地を含む東京ドーム10個分の広大な農場で、養豚や茶作りなどを行っている。徹底した衛生管理のもとで、ハムやベーコンの燻製やソーセージの成形などをひとつひとつ手作業で製造。
[写真12、写真13]
自家農園で養豚・加工したハムとソーセージの詰め合わせ
ハーブティーとハーブウォーターのセット/2,500円(税込)
〔生産者〕公益財団法人喝破道場(香川県高松市)
瀬戸内海に面したハーブ園で栽培。遠赤外線乾燥や自社蒸留器の使用など、ハーブそのものの良さを引き出す製品作りを目指す。畑やハーブ園での農作業やハーブ喫茶などでの接客を通じて、青少年の自立支援を行っている。
[写真14]
ハーブ園での作業の様子
[写真15]
自然栽培で育てられたハーブを贅沢に使用
ジャパンプレミアムレッド1本+プレミアム2本セット/2,061円(税込)
〔生産者〕一般社団法人れんこん(福岡県久留米市)
農産物の生産・販売や弁当の製造などを行う。2013年に販売を開始したドレッシングは自社農園産のたまねぎとごまを使い、下準備から製造までほとんど手作業。同商品は2015年、2016年に「福岡県まごころ製品うまいものグランプリ」を受賞。
[写真16]
「静置製法」で発酵・熟成させた、まろやかな酢を使ったドレッシング
西陣麦酒 柚子無碍(ゆずむげ)6本セット/3,780円(税込)
〔生産者〕NPO法人HEROES(京都府京都市)
2016年から「西陣麦酒計画」と題したプロジェクトを始動。寄付を募り、2017年に自閉症の人とともにビールの醸造・販売を開始した。西陣産業会館内で味わえるほか、京都市内の20以上の店で取り扱っている。
[写真17]
国産の柚子をプラス。爽やかでフルーティな風味を感じる
オンラインショップだけじゃない
竹炭ソフトフランス/220円(税込)
〔生産者〕社会福祉法人草笛の会(静岡県菊川市)
添加物、マーガリンを使用しないパンを製造し、地元の保育園やドラッグストアに提供している。パン作り以外にも、焼き菓子の製造と販売、印刷、手芸工房、楽器製作などを行っている。
電話:0537-73-4665
[写真18]
整腸作用のある竹炭粉末を練り込んで焼いたフランスパン
海水みかんシャーベット10個セット/1,500円(税込)
〔生産者〕社会福祉法人佐賀西部コロニー(佐賀県太良町)
みかんやさつまいもの生産、カブトムシの養殖などを行う。天然の海水を農産物に散布する「海水農法」は、独自に開発した農法で、農作物の甘みを増加させるとして農業の専門家や研究者から注目されている。
電話:0952-84-3511
[写真19]
海水を使って育てた深い甘みのあるみかんをシャーベットに加工
マルシェで楽しもう!
障害者が心を込めて作った新鮮な農産物や加工品がずらりと並ぶ「ノウフクマルシェ」が全国各地で行われています。開催日時や場所などの情報はWebサイトで紹介。お近くのマルシェに足を運んでみては。
[写真20]
マルシェの様子
全国各地の開催情報はこちら
[QRコード2]
http://noufuku.jp/marche〔外部リンク〕
農業と福祉をつなぎ、その未来を構築する活動を
日本農福連携協会は農業と福祉をつなぐ連絡組織として生まれました。2018年発足以前から農福連携は始まっていましたが、農業側にアプローチしたい福祉施設のための窓口がなく、スムーズに連携できる環境ではありませんでした。そこで、協会がパイプ役を担い、福祉施設に農業のノウハウなどを提供する場を設けたり、人手不足に悩む農業関係者に障害者雇用を広める機会を作ったりする活動を行っています。
また、消費者へのPRも重要課題です。オンラインショップやマルシェなどを通じて情報を発信していきたいと考えています。農福連携の商品は手作りの高品質、地域密着という社会的付加価値を持っています。それを保証し、広く認知してもらうためにJASマークが検討され、今春に制定される予定です。
農山村の人口減少や耕作放棄地の増加などが問題となる今こそ、地域活性化は、農協など農業関係者を含む社会全体が取り組むべき課題です。さまざまなハンデを負った人々が生活と就労の場を得て、幸せに暮らせる社会を作るため、農福連携は重要な役割を担っていると思います。
皆川芳嗣(みながわ よしつぐ)さん
日本農福連携協会会長理事、農林中金総合研究所理事長
日本農福連携協会を発足させた
[写真21]
皆川芳嗣さんの写真
取材・文/池田菜津美
特集2 スマイルケア食
加齢や体の障害のために、嚙む力や飲み込む力などの食べる機能が弱くなった人は低栄養の状態に陥ることがあります。スマイルケア食とは、そうした人たちに向けて開発された新しい介護食品です。
[写真1]
食卓で食事をする老夫婦の写真
65歳以上の在宅療養患者の約7割は低栄養のおそれあり
嚙む力や飲み込む力が弱くなると、食べる物が偏ったり、食事の量が少なくなったりして、活動に必要なタンパク質を筆頭とする栄養素とエネルギーが足りない状態になります。また、固いものを嚙むことが困難な人や誤嚥がある人は、BMI(肥満度や体格を表す指数)の数値が低くなるというデータも。その状態が続くと、筋肉量が減少して骨折しやすくなるほか、免疫力や認知機能の低下にもつながります。そうなると活動が億劫になって消費エネルギーが減少し、食欲が低下して、さらなる栄養不足を招くという悪循環に陥ってしまうのです。
食べる機能が弱くなった人が、普段の食事で効率よくエネルギーを摂取できるように作られたのが介護食品ですが、これまでの介護食品は、見た目や食感などの点で食欲をそそりにくいという課題がありました。
そこで、農林水産省では2014(平成26)年から「スマイルケア食」という新たな介護食を提案。おかゆや雑炊などの主食から魚や肉などのおかず、ゼリーなどのデザートまで、食べやすさに加えて、味付けや見た目にもこだわった食品が次々に製品化されています。
65歳以上の在宅療養患者の栄養、摂食・嚥下機能に関するデータ
[図1]
その7割以上は栄養状態に問題あり(問題あり:72.7パーセント)
[図2]
その5割は飲み込むことに問題あり(問題あり:47.3パーセント)
[図3]
その3割以上は噛むことに問題あり(問題あり:35.8パーセント)
出典:国立長寿医療研究センター「平成24年度老人保健健康増進等事業 在宅療養患者の摂取状況・栄養状態の把握に関する調査研究報告書」
スマイルケア食は3種類に大別されます
[ロゴ1]
スマイルケア食普及推進ロゴマーク
スマイルケア食には、状態に応じた3種類8段階のマークが付いています。食べる人の嚙む力や飲み込む力の状態にあったものを選ぶことが大切です。
[画像1]
青マーク:嚙むことや飲み込むことに問題はないものの、健康な体を維持するための栄養補給が必要な人向け
[画像2]
黄マーク:嚙むことに問題がある人向け。段階に応じて2から5の4タイプがある
[画像3]
赤マーク:飲み込むことに問題がある人向け。段階に応じて0から2の3タイプがある
スマイルケア食の選び方
下のチャート図で、どのようなスマイルケア食を選べばよいかを確認しましょう。
- 【スタート】食事に関する悩みがある
- 飲み込むことに問題がある:いいえ
- 噛むことに問題がある:いいえ
- 最近食べる量が少なくなった、または体重が減った【相談】
- 【スタート】食事に関する悩みがある
- 飲み込むことに問題がある:いいえ
- 噛むことに問題がある:はい
- [写真3]
容易に嚙める食品:黄マークの5番
- [写真4]
歯ぐきでつぶせる食品:黄マークの4番
- [写真5]
舌でつぶせる食品:黄マークの3番
- [写真6]
嚙まなくてよい食品:黄マークの2番
- 【スタート】食事に関する悩みがある
- 飲み込むことに問題がある:はい【相談】
- [写真7]
少しそしゃくして飲み込める性状のもの:赤マークの2番
- [写真8]
口の中で少しつぶして飲み込める性状のもの:赤マークの1番
- [写真9]
そのまま飲み込める性状のもの:赤マークの0番
【相談】この選び方にかかわらず、食べることについて気になることがあれば、まずは専門職(医師、歯科医師、管理栄養士など)に相談しましょう。医師などの指導に従い選択してください。歯科治療、口やのどの動きの訓練などにより、飲み込みに問題のある方などでも、ほかの分類の食品が食べられるようになる場合もあります。
いつもの食事に取り入れる
訪問管理栄養士の中村先生に、スマイルケア食(青マーク)を使った献立例を教えてもらいました。自分の健康状態に応じて取り入れてみましょう。
朝食の一例
[写真1]
フレンチトーストとコーンスープ
フレンチトーストは、メディミル ロイシンプラス1本、卵1個、砂糖5グラムを混ぜ、食パンを浸し、ラップをかけて500ワットのレンジで2分加熱。粉末をお湯で溶いてミックスベジタブルを入れたコーンスープとコーヒーを添えます。
使用したスマイルケア食
[写真2]
メディミル ロイシンプラス バニラ風味(味の素)
100ミリリットルで200キロカロリー、タンパク質8グラムを配合。ほかにビタミンB群など28種の栄養が取れる
[写真3]
栄養プラス 粉末タイプ コーンポタージュ(アサヒグループ食品)
10種のビタミン、カルシウム+ビタミンD、食物繊維、鉄、亜鉛、銅を配合
夕食の一例
[写真4]
そぼろ親子丼と煮物
ご飯の上に温めたレトルトのそぼろ親子丼をかけ、いんげんを散らします。大根とにんじん、しいたけの煮物と、具だくさんの味噌汁、さらに食後のデザートとして、メイバランスを添えていただきます。
使用したスマイルケア食
[写真5]
明治 メイバランスArg Miniカップ ミルク味(明治)
125ミリリットルで200キロカロリーが摂取できる高エネルギー飲料。普通牛乳の約2.2倍のタンパク質を含む
[写真6]
150キロカロリーマイサイズ いいね!プラス たんぱく質を摂りたい方のそぼろ親子丼(大塚食品)
鰹だしのうま味がきいたレトルトタイプの親子丼。1食でタンパク質が10グラム取れる
スマイルケア食で栄養満点
20年以上にわたって高齢者の家を訪問し、栄養指導を行っていますが、孤食や老老介護で食事の支度が億劫になり、食事の量も品目数も減少して低栄養に陥る人が非常に多いのが現状です。そうした人にとって、毎日の食事に一品加えるだけで摂取できる栄養が格段に増加するスマイルケア食は、利用価値の高いもの。介護する側の負担も軽減できます。
たとえば、高齢者の朝食はトースト1枚とコーヒー1杯というパターンが割と多いのですが、これにスマイルケア食を加えて、上記の朝食例のメニューにすれば、エネルギーもタンパク質も2倍以上を摂取することが可能です。夕食も一汁一菜で済ませがちですが、上記の夕食例のようなレトルト食材を利用すれば、手軽に効率よく栄養を取ることができます。
また、より食事を楽しむため、食欲をそそるように緑黄色野菜で色みを足すことや、好みの味に調味するのがおすすめ。飲み物などは、とろみ剤を加えて飲み込みやすくさせるのもいいですね。
中村育子(なかむら いくこ)先生
医療法人社団 福寿会 福岡クリニック 在宅部栄養課 課長
訪問管理栄養士の第一人者。訪問管理栄養士の育成や食品メーカーとの共同開発にも関わっている
[写真7]
中村育子先生の写真
スーパー、ドラッグストアなどで購入できます
スーパーマーケットやドラッグストアなどの介護用品コーナーで、スマイルケア食を取り扱う店舗が徐々に増えています。一部商品は調剤薬局で取り寄せることも可能。近くに扱う店がない場合は、各メーカーのWebサイトや、介護関連のオンラインショップなどから購入することができます。
イトーヨーカドー
イトーヨーカドーは2004年から店舗内に介護用品専門ショップ「あんしんサポートショップ」を併設。店舗によっては専門スタッフが常駐しているので、自分にあった食品選びを相談できる
[写真8]
介護食などが充実しているイトーヨーカドー大井町店
イトーヨーカドーあんしんサポートショップ
[QRコード1]
http://www.itoyokado.co.jp/lp/kaigo/〔外部リンク〕
ツルハドラッグ
全国に店舗を展開しているツルハドラッグ。千葉県の早野店など、22の店舗でスマイルケア食を扱っている
[写真9、写真10]
ツルハドラッグの店舗およびやわらか食コーナーの写真
ツルハドラッグ
[QRコード2]
http://www.tsuruha.co.jp/〔外部リンク〕
宅配や外食で介護食をお手軽に
介護食に対応したお弁当宅配サービスやレストランも徐々に増えています。ファンデリーが運営する宅配サービス「ミールタイム」のお弁当は種類が豊富で、体調や好みにあわせて選択できるのがポイント。電話注文には栄養士が対応し、食事の問題を相談できます。
[写真12]
骨なし鯖のミルク味噌煮セット
[写真13]
カレイと白菜のクリーム煮セット
[写真14]
いわし入つみれの和風あんセット
[写真15]
豚肉と玉ねぎの卵とじセット
ファンデリー ミールタイム
電話:0120-054-014(栄養士への相談窓口、平日9時から18時)
[QRコード4]
https://www.mealtime.jp/〔外部リンク〕
お店探しに役立つサイト
レアめし-Check A Food-
NPO法人Checkが運営。介護食や食物アレルギー、ベジタリアン対応など「希少な外食」に対応する店舗が検索できる
[写真17]
レアめし-Check A Food-のサイトの写真
[QRコード6]
http://www.raremeshi.com/〔外部リンク〕
あっぱれ 全国の日本一を訪ねて vol.10
健康寿命日本一!静岡県 浜松市
「いつまでも元気に暮らしたい」、それは誰もが願うこと。静岡県浜松市は、全国に20ある大都市の中で、3期連続して健康寿命第一位に輝いています。健康に長生きできる秘訣を、農家の方々に伺いました。
温暖な気候が農業や健康寿命に貢献
健康寿命とは、介護の手を借りることなく、自分自身の力で元気に日常生活を過ごすことができる期間のこと。浜松市が男女共に1位となっている理由はさまざま考えられていますが、大きな理由の一つに温暖な気候があげられています。
一年を通じて過ごしやすく、日照時間も長いため、骨密度や免疫力が高められていること。また温暖な気候を活用した農業が盛んなこともポイントです。温州みかんやメロンなどの果実をはじめ、全国でもトップクラスを誇るさまざまな農産物が栽培されており、地産地消によって栄養価が高い旬の食材を口にすることができます。さらには農業は定年がないため長く現役で働く人も多く、気力や体力が充実していることも要因とされています。
[写真1]
畑での収穫の様子
[図1]
静岡県 浜松市
【DATA】東京と京都のほぼ中間に位置し、市の面積は全国第2位の広さがある。2011年には日照時間日本一を記録。
浜松市ってこんなところ
その1 世界に知られる「音楽の都」
[写真2]
YAMAHAやKAWAI、Rolandといった世界的楽器メーカーの本社が所在。また、ピアノやオペラの国際コンクールが開催されるなど「音楽の都」として知られています。
写真提供/©浜松国際ピアノコンクール
その2 浜松城は「出世城」
[写真3]
徳川家康が築いた浜松城は、代々、徳川家と縁の深い譜代大名が城主を務めました。そのため幕府の要職に就いた者も多く、いつしか「出世城」と呼ばれるようになりました。
その3 うなぎ蒲焼支出額日本一
[写真4]
古くからうなぎ養殖が行われている浜松市は、蒲焼の支出額も日本一。全国の県庁所在地、政令指定都市の中で、浜松市は10年連続で安定して首位を獲得しています。
日本一にズームイン
気候が穏やかで水が良く働くことを厭わない風土
早掘りのラッキョウであるエシャレット。うま味や風味があり、適度な辛さが特徴です。浜松市南部の海岸に近いエリアで、砂地を利用して栽培が行われています。その農家が所属する部会は総勢83名。平均年齢は70歳と高齢ですが、毎日元気に農業にいそしんでいます。
浜松は気候が温暖で、とても住みやすいです。また海、山がともに近く、水も豊富なので、食べ物がとてもおいしいですね。あと浜松の人はとても働き者なのではないでしょうか。私もエシャレット農家をしながら、夏はさつまいもを作り、冬はしらすうなぎを獲るため、漁業もしています。
負荷がかかりすぎない仕事が寿命を延ばす?
エシャレット栽培で最も大変なのは、夏の盛りの植え付けです。一家総出、もしくは近所の農家が手伝って、一気に種球を植えていきます。
またエシャレットは地中深く根を張るので、収穫も大変な力仕事です。特徴である白く美しい部分を際立たせながら箱詰めするまで、すべて手作業。労力はかかりますが、無茶をしない程度に体に負荷をかけることが、もしかしたら長く働ける体作りの秘訣なのかもしれません。
高齢化で生産農家が減ってはいますが、みんなで相談しながら、一軒ごとの収穫量をもっと上げられるように、これからもがんばっていきます。
[写真5]
JAとぴあ浜松 エシャレット部会 部会長 井口 勝彦さん
28年前に、会社を退職して実家のエシャレット農家を継ぐ。現在は部会長として、生産者の意見を吸い上げて今後の方針を定めたり、講習会なども開催している。
浜松市民が愛するB級グルメ「浜松餃子」
毎年、購入額の首位を宇都宮と争っている餃子。キャベツなどの野菜が豊富に入っているのが特徴です。円形に焼き、中央に茹でもやしをのせるのも浜松餃子ならでは。
[写真6]
浜松餃子の写真
長く出荷できるよう収穫時期を調整
[写真7]
早採りのものには土に白いビニールシートを、遅く収穫するものには黒いシートを張って、収穫時期をずらす工夫も!
収穫から箱詰めまで手作業で愛情を込める
[写真8]
畑で一度泥を落とし、さらにキレイにするために、高圧の水を噴射して、残った泥と薄皮を一気にむく
健康寿命に一役買うヘルシー野菜
[写真9]
血液をサラサラにし、便秘に効く成分が含まれる健康野菜。加熱すれば緑の葉もおいしく食べられます
取材・文/柳澤美帆、撮影/川本聖哉
MAFF TOPICS
「MAFF TOPICS」では、農林水産省からの最新ニュースなどを中心に、暮らしに役立つさまざまな情報をお届けいたします。
NEWS1
「ディスカバー農山漁村(むら)の宝」グランプリ決定
日本各地に埋もれている地域資源の力を引き出し、地域の活性化や所得向上に取り組む優良事例を選定する「ディスカバー農山漁村の宝」。平成30年11月の有識者懇談会において、32選定地区の中からグランプリおよび特別賞の計6地区が決定しました。
最高賞であるグランプリに輝いたのは、栃木県茂木町の株式会社もてぎプラザ。地元産素材を使った商品開発による地産地消の推進、地域の雇用拡大への貢献などが高く評価されました。このほか、特別賞としてフレンドシップ賞、ジビエグルメ賞、チャレンジ賞、アクティブ賞、プロデュース賞が選ばれました。
受賞した6地区の取り組みは、「ディスカバー農山漁村の宝」特設Webサイトやインスタグラムで魅力たっぷりにお届けしています。また、32選定地区のおすすめ商品も紹介していますので、ぜひご覧ください。
グランプリ:6次産業を通じての雇用機会の拡大
株式会社 もてぎプラザ
[写真1]
地元産米粉や卵を使ったバウムクーヘンなどを販売。事業拡大により5年間で雇用者数が4名から34名に増加した
フレンドシップ賞:畑ガイドツアーで十勝農業を発信
株式会社いただきますカンパニー
[写真2]
ガイドと畑を歩き、そこで採れたものを食べる体験ツアーを実施。定年退職者や主婦がガイドとして活躍している
ジビエグルメ賞:ごっつぉ まいぞぉ のとしし大作戦
合同会社のとしし団
[写真3]
獣肉加工施設を整備し、捕獲したイノシシを地域資源として活用。ふるさと納税の返礼品としても高評価を受けている
チャレンジ賞:村のゆずからJAPONの「YUZU」へ
北川村ゆず輸出促進協議会
[写真4]
世界初となるEUへの「青果ゆず」の輸出を開始。生産者の意欲が高まり、ゆず専業を目指す若手農家も増えた
アクティブ賞:女性が輝く!女性だけの農業法人
ウーマンメイク株式会社
[写真5]
子連れ出勤も可能な柔軟な勤務形態で、レタス栽培に取り組む。女性目線で開発した独自ブランドを全国展開
プロデュース賞:新丹波ブランド 丹波なた豆茶を世界に発信
有限会社こやま園
[写真6]
地元の伝統作物「なた豆」を自社で栽培・加工し「なた豆茶」として販売。香港やベトナムへの輸出も行っている
NEWS2
木のある豊かな暮らし
[ロゴ1]
「JAPAN WOOD DESIGN AWARD 2018」のロゴ
今年度で4回目を迎えた「ウッドデザイン賞」は、木で暮らしと社会を豊かにするモノ・コトを表彰し、国内外に発信するための表彰制度です。
今年度の「ウッドデザイン賞2018」には、393点の応募があり、189点がウッドデザイン賞を受賞。さらに最終審査が行われ、最優秀賞(農林水産大臣賞)、優秀賞(林野庁長官賞)、奨励賞(審査委員長賞)に計25点が選出されました。
最優秀賞を受賞した「江東区立有明西学園」は、都市部での大規模な学校施設の木構造化・木質化の実現と、地域産業の伝承・感性教育を融合させた質の高い施設作りが高く評価されました。
さらに、今年度は、日本の木の文化を生かした施設・空間、木製品、活動などで「おもてなし」の取り組みにつながる作品を対象とした「木のおもてなし賞(特別賞)」を新設。「斗組(とぐみ)テーブル」など3点が選ばれました。
これらの受賞作品は、公式Webサイトに掲載するとともに、展示会での作品の展示やメディアなどと連携し、積極的なPR活動を行っていきます。
最優秀賞(農林水産大臣賞):江東区立有明西学園
株式会社竹中工務店、江東区、株式会社久米設計(東京都)
[写真7、写真8、写真9]
都市部では難しい大規模な学校施設の木構造化、木質化を実現。木の回廊には、世界のあいさつや偉人の名言が焼き印のように刻まれ、生徒の自発的な学びを促している
優秀賞:改質リグニンを利用した3Dプリンター用基材の開発と造形試作への展開
ネオマテリア株式会社、京都工芸繊維大学(京都府)
[写真10]
次世代ものづくりの技術である3Dプリンター用基材に木材由来の新素材「改質リグニン」を活用。木質バイオマスの需要創出につながる
優秀賞:odai
宮川森林組合(三重県)
[写真11]
広葉樹を活用した食品やアロマ雑貨などの商品群。デザイン性の高い多彩なラインナップで地域材の魅力を伝える
優秀賞:デジタルファブリケーションによる自律分散型生産ネットワーク
VUILD株式会社(神奈川県)
[写真12]
デジタル加工機の普及、設計ひな型の共有などを通じ、全国各地で地域材を使った付加価値の高い製品作りができるシステムを構築
特別賞(木のおもてなし賞):斗組テーブル
有限会社守屋建具店(岡山県)
[写真13]
公共施設やオフィスなどで使用できるビッグサイズのテーブル。斗組という伝統建築技法を用いた、耐久性に優れ、美しい形が特徴的
NEWS3
日本の農林水産物・食品を世界へ
農林水産省は、農林水産物や食品の輸出に意欲的に取り組む生産者や事業者、輸出に関わりのある流通業者などを対象に支援する「GFPコミュニティサイト」を開設しました。
サイトからGFPに登録すると、無料で農林水産省による「輸出の可能性」の診断を受けられます。診断は、サイトに登録した生産者や事業者への視察・ヒアリングに基づいて実施。出荷量や農薬の使用など産地の状況を踏まえ、レポートを提供します。レポートには、対象となる生産物の日本からの輸出状況、輸出のための商談に役立つ情報などが盛り込まれており、そのデータを元に最適なサポートを受けることができます。
さらに、登録者同士の交流促進、海外の規制やニーズに関するタイムリーな情報提供、輸出のためのマッチングサポートなど、行う支援もさまざま。
農林水産物・食品の輸出は、生産量増加による食料自給率の向上や新規就農者のモチベーションアップにつながります。GFPを通じて、生産者、売り手、政府が一丸となって日本ブランドを世界へ発信していきます。
農林水産物・食品の輸出額の推移
[図1]
農林水産物・食品の輸出額の推移
出典:財務省「貿易統計」をもとに農林水産省作成
GFPってなに?
G…Global
F…Farmers/Fishermen/Foresters/Food Manufacturers
P…Project
「日本の農林水産物・食品の輸出プロジェクト」のことを表します
GFP登録者に提供されるサービス
[イラスト1]
農林水産省が行う「輸出の可能性」の診断
[イラスト2]
海外市場に輸出する際の規制や規格認証、政府の支援策などの情報の提供
[イラスト3]
輸出を目指す生産者で作ったグループに対し、産地形成に必要な輸出計画策定のための支援
[イラスト4]
交流イベントを通じた、新たな販売商品を求める海外の事業者と国内の生産者・製造事業者とのマッチング
訪問診断の様子
農林水産省、ジェトロの職員が全力でサポートします!!
[写真14]
野菜を加工する施設でヒアリングを行い、海外マーケットのニーズなどの情報を提供
[写真15]
いちご農家を訪問し、グローバルGAPを取得するための情報を提供
1億人ではなく、100億人を見据えた農林水産業へ。
[ロゴ2]
「GFP(農林水産物・食品輸出プロジェクト)」のロゴ
NEWS4
花を通じて四季を感じる
花、葉、枝などの植物を美しく造形することをフラワーデザインといいます。その日本一を決める公募展「日本フラワーデザイン大賞2019」が2月23、24日の両日、京都市勧業館(みやこめっせ)で開かれます。コンテストは、アレンジメント、ブライダルブーケ、花束など計6部門。会場には一次審査を通過した作品が展示され、出展者の感性によって引き出された植物の新たな魅力を感じることができます。
さらにNFD全国高校生フラワーデザインコンテストも同時開催。高校生らしい豊かな想像力を感じさせる作品を、ぜひ楽しんでください。
日本フラワーデザイン大賞
[写真16]
大賞/内閣総理大臣賞 アレンジメント部門
小松 弘典さん(山梨県)
[写真17]
農林水産大臣賞 ブライダルブーケ部門
杉本 一洋さん(岡山県)
NFD全国高校生フラワーデザインコンテスト
[写真17]
金賞/農林水産大臣賞 壁飾り部門
加茂農林高校
徳永 江利さん(岐阜県)
[写真18]
金賞/文部科学大臣賞 アレンジメント部門
桜塚高校
白川 澪那さん(大阪府)
※写真はすべて前回(2017年)のものです。
日本フラワーデザイン大賞2019
日時:2月23日(土曜日)10時から19時、2月24日(日曜日)10時から17時
場所:京都市勧業館(みやこめっせ)第2展示場
入場料:1,200円(当日)、1,000円(前売り)
〈同時開催〉2月24日(日曜日)第14回NFD全国高校生フラワーデザインコンテスト
主催:公益社団法人日本フラワーデザイナー協会(略称:NFD)
詳しくはこちら
[QRコード5]
http://www.nfd.or.jp/division/jfd-award〔外部リンク〕
取材・文/丸山 こずえ
クイズの答え
とろみ剤
飲み込む力が衰えた人でも安心して飲食できるように使われています。喉を流れる速さが遅くなり、誤嚥防止につながるためです。
そのとろみ剤がボタンを押すだけで加えられる自動販売機が登場しました。好きなカップ入り飲料にとろみづけができ、病院や介護施設などで導入されています。
[写真19]
ただとろみをつけるだけでなく、その濃度も調節できる
写真提供/ニュートリー株式会社
編集・発行 農林水産省大臣官房広報評価課広報室
〒100-8950 東京都千代田区霞が関1-2-1
TEL:03-3502-8111(代表)
FAX:03-3502-8766
編集協力 株式会社文化工房
〒106-0032 東京都港区六本木5-10-31 矢口ビル4F
TEL:03-5770-7114(代表)
FAX:03-5770-7132
編集/中村麻由美、小尾悠梨子、糸瀬早紀、 藤田紫糸、小竹結女、伊藤高、小野沢啓子、三邉晶子
アートディレクション/釜内由紀江
デザイン/石川幸彦、清水桂